
ベンチプレス100kg。
同じ100kgでも、
30歳で挙げる100kgと、60歳で挙げる100kgは、本当に同じ「強さ」なのでしょうか?
ベンチプレスの記録を比較するときは、どうしても「何kg挙がったか」に目が向きます。
しかし、人間の筋力は年齢によって一定ではありません。
10代ではまだ身体が発達途中ですし、20〜30代で高い水準に達したあと、年齢とともに少しずつ変化していきます。
実際、パワーリフティングの競技データを使った研究でも、ベンチプレスを含む筋力パフォーマンスは20代後半〜30代前半付近でピークとなり、その後は年齢とともに低下していく傾向が報告されています。[1][2][3]
では、
45歳ならどのくらい補正すればいいのか?
60歳なら?
70歳なら?
という具体的な数字はどう考えればよいのでしょうか。
そこで本記事では、OpenPowerliftingの大規模競技データ、Strength Levelの年齢別基準、既存のマスターズ年齢係数、複数の研究結果を比較し、ベンチプレスを年齢の異なる人同士で比較するための「年齢補正」について考えていきます。
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- ベンチプレスの強さは年齢によって変わる?
- ベンチプレスが最も強くなりやすい年齢は?
- 10代・20代はどう考える?
- 40代ではベンチプレスはどのくらい変わる?
- 50代ではどのくらい補正される?
- 60代になると年齢差が大きくなる
- 70代・80代ではさらに差が大きくなる
- 年齢別のベンチプレス補正係数
- ここから詳細|年齢補正係数をどのように算出したのか
- 年齢補正に使用した5つのデータ
- van den Hoek et al. 2024を35%とした理由
- OpenPowerliftingデータを実際に係数へ変換する
- Strength Levelを25%使用した理由
- McCulloch係数を15%使用
- Hernández-Ugalde 2022を15%使用
- Latella et al. 2018を10%使用
- なぜ単純平均ではなく重みを変えたのか
- データが存在しない年齢はどうした?
- 5歳刻みの数字は「観測値そのもの」ではない
- 最終的な年齢補正係数
- McCulloch係数より70代以降の補正を小さくした理由
- 年齢補正には大きな限界がある
- 年齢補正は「100kgを130kgに変える魔法の数字」ではない
- 結論|年齢が違う人のベンチプレスは重量だけでは比較できない
- 参考文献
- 参考データ
ベンチプレスの強さは年齢によって変わる?
最初に、大まかな傾向から見ていきましょう。
ベンチプレスの能力は、
年齢が1歳上がるたびに一定量ずつ落ちていく
という単純なものではありません。
10代はまだ成長途中です。
その後、20代に入って筋力が高くなり、20代後半〜30代付近で高い水準になります。
そこから急激に弱くなるわけではありませんが、40代、50代、60代と年齢が上がるにつれて、平均的には少しずつ差が大きくなっていきます。
OpenPowerliftingの競技記録を分析したvan den Hoekらの研究では、男性ベンチプレスの相対筋力は18〜35歳で最も高く、その後の年齢群では低下していました。[1]
Hernández-Ugaldeの研究でも、パワーリフティングおよびベンチプレスの競技成績は、おおむね27.67〜31.50歳付近でピークになるという結果が示されています。[2]
つまり、
「30歳と70歳の100kgを、単純に同じ100kgとして比較する」
という方法では、年齢による違いを考慮できません。
そこで使うのが年齢補正です。
ベンチプレスが最も強くなりやすい年齢は?
研究によって多少違いますが、今回確認したデータでは、ベンチプレスの筋力が高くなりやすいのは20代後半〜30代です。
Hernández-Ugaldeは、IPF系大会などのデータを利用して、パワーリフティングおよびベンチプレスの年齢と競技成績の関係を分析しています。
その結果、種目やカテゴリーによって多少違いはあるものの、ピークは27.67〜31.50歳の範囲にありました。[2]
男性クラシックベンチプレスでは、分析方法によってピーク年齢は約30〜31歳となっています。[2]
また、van den Hoekらが809,986件の競技記録を分析した研究でも、18〜35歳のグループでベンチプレスの相対筋力が最も高くなっています。[1]
そのため、本サイトの年齢補正では、
25〜40歳を基準となる1.00
として扱うことにしました。
30歳だけを基準にするのではなく、25〜40歳を同じ1.00とするのは、この年代では年齢による補正を細かく行うよりも、実用上「ピーク付近の年代」としてまとめて扱った方が分かりやすいと判断したためです。
10代・20代はどう考える?
年齢補正というと、高齢者だけに必要なものと思うかもしれません。
しかし、10代も20〜30代と同じ条件ではありません。
van den Hoekらの男性ベンチプレスのデータを見ると、90パーセンタイルの体重比は、
- 12〜17歳:約1.63倍
- 18〜35歳:約1.96倍
でした。[1]
つまり、競技レベルの高い層を比べても、10代では成人のピーク年代より低い傾向があります。
Strength Levelの年齢別データでも同じ傾向が見られます。
そのため、本サイトでは15歳に1.20、20歳に1.03という補正を設定しています。
ただし、特に10代については成長段階の個人差が非常に大きいため、この数字を絶対的な基準として使うべきではありません。
40代ではベンチプレスはどのくらい変わる?
40歳までは、今回の年齢補正では1.00としています。
45歳では、
1.06
です。
例えば、45歳の人が100kgを挙げた場合、
となります。
年齢補正後の数値は106kg相当です。
ただし、これは、
「45歳の100kgは実際には106kg挙げている」
という意味ではありません。
実際に持ち上げた重量は当然100kgです。
あくまで、
異なる年齢の人同士を同じ尺度で比較するための数字
です。
50代ではどのくらい補正される?
50歳では、
1.11
55歳では、
1.16
としました。
例えば55歳で100kgを挙げた場合、
となります。
年齢補正後では116kg相当です。
50代になると、30代との平均的な筋力差が少しずつ無視できなくなってきます。
実際、Latellaらが競技パワーリフター1,368名を調査した研究では、男性ベンチプレスの相対筋力は23〜39歳のOpenカテゴリーが最も高く、50〜59歳のMasters IIでは約19.7%低い値でした。[3]
ただし、この「19.7%」をそのまま年齢補正として採用しているわけではありません。
後ほど説明しますが、研究によって年齢による低下量にはかなり違いがあるため、複数のデータを組み合わせています。
60代になると年齢差が大きくなる
今回の独自係数では、
60歳:1.30
65歳:1.37
としています。
60歳で100kgを挙げた場合、
となります。
30代の100kgと60代の100kgをそのまま同じものとして比べるのではなく、年齢を考慮すると、それだけ意味のある記録だと考えるための補正です。
60歳を超えてくると、多くの年齢別データで若い年代との差が明確になります。
van den Hoekらの研究では、男性ベンチプレス90パーセンタイルの体重比は18〜35歳で約1.96倍だったのに対し、60〜79歳では約1.60倍でした。[1]
単純な比率にすると、
です。
つまり、このデータだけを見ると60〜79歳は約1.23倍の補正になります。
一方、Strength Levelや既存のマスターズ年齢係数では、それより大きな補正になります。
この差があるため、1つのデータだけでは判断せず、複数の資料を使いました。
70代・80代ではさらに差が大きくなる
独自係数では、
70歳:1.44
75歳:1.53
80歳:1.79
です。
例えば70歳で100kgなら、
80歳で100kgなら、
となります。
ただし、高齢になるほど数字の解釈には注意が必要です。
理由は単純で、競技人口そのものが少なくなるからです。
van den Hoekらの研究では非常に大規模な競技データが使われていますが、年齢が上がるほど該当する記録数は少なくなります。[1]
また、80歳までパワーリフティングを続けている人は、一般的な80歳を代表しているわけではありません。
長期間トレーニングを継続できている、かなり特殊な集団です。
そのため、特に70〜80歳以上の補正値については、
「科学的に決まった正解」ではなく、複数のデータから作った比較の目安
として考えてください。
年齢別のベンチプレス補正係数
今回算出した年齢補正係数は以下の通りです。
| 年齢 | 独自年齢補正係数 |
|---|---|
| 15歳 | 1.20 |
| 20歳 | 1.03 |
| 25歳 | 1.00 |
| 30歳 | 1.00 |
| 35歳 | 1.00 |
| 40歳 | 1.00 |
| 45歳 | 1.06 |
| 50歳 | 1.11 |
| 55歳 | 1.16 |
| 60歳 | 1.30 |
| 65歳 | 1.37 |
| 70歳 | 1.44 |
| 75歳 | 1.53 |
| 80歳 | 1.79 |
使い方は、
です。
例えば65歳で120kgなら、
となります。
ただし、この164.4kgは「推定1RM」ではありません。
あくまで年齢条件をそろえて比較するための年齢補正値です。
実際に自分の年齢・体重だと一般的にどれぐらいの強さなのか気になる方は「ベンチプレス年齢・体重換算計算機」をご利用下さい。

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ここから詳細|年齢補正係数をどのように算出したのか
ここまで読んで、
「そもそも1.30や1.44という数字はどうやって出したの?」
と思った方もいると思います。
ここからは、今回使用したデータと計算方法を詳しく説明します。
なお、最初に重要な点を明記しておきます。
今回の年齢補正係数は、特定の論文で発表された公式な年齢係数ではありません。
複数の競技データ・研究・既存の年齢補正式を同じ尺度に変換し、本サイト独自の比率で統合した実用モデルです。
したがって、
「論文によって1.30と証明された」
という意味ではありません。
年齢補正に使用した5つのデータ
今回、主に以下の5つを使用しました。
| データ | 主な役割 | 重み |
|---|---|---|
| van den Hoek et al. 2024 / OpenPowerlifting | 大規模な競技データ | 35% |
| Strength Level | 5歳刻みの年齢別ベンチプレス基準 | 25% |
| McCulloch Master Age Formula | 既存のマスターズ年齢補正 | 15% |
| Hernández-Ugalde 2022 | 生涯のベンチプレス成績曲線 | 15% |
| Latella et al. 2018 | 年齢カテゴリー別の相対筋力 | 10% |
この35%、25%、15%、15%、10%という比率は、各研究が指定した比率ではありません。
本サイトが独自に設定した重みです。
その理由も含めて説明していきます。
van den Hoek et al. 2024を35%とした理由
最も大きな比率を与えたのがvan den Hoekらの研究です。[1]
この研究では、薬物検査のあるノーギア系パワーリフティング大会から、
809,986件
の競技記録が分析されています。
男性571,650件、女性238,336件が含まれ、スクワット・ベンチプレス・デッドリフトについて年齢別の基準値が算出されています。[1]
今回の目的に対して非常に相性が良いデータです。
理由は、
- 実際のベンチプレス競技記録である
- サンプル数が非常に多い
- 若年者から80歳以上まで含む
- 体重比で比較できる
- 比較的新しいデータ
だからです。
そのため、最も大きい35%を割り当てました。
OpenPowerliftingデータを実際に係数へ変換する
男性ベンチプレスの90パーセンタイルを見ると、おおよそ次の値です。[1]
| 年齢区分 | ベンチプレス/体重 |
|---|---|
| 12〜17歳 | 1.63 |
| 18〜35歳 | 1.96 |
| 36〜59歳 | 1.92 |
| 60〜79歳 | 1.60 |
| 80歳以上 | 1.31 |
ここでは18〜35歳を基準にします。
基本となる計算式は、
です。
は年齢補正係数、
は基準年代の筋力、
は対象年代の筋力です。
12〜17歳
約1.20です。
36〜59歳
約1.02です。
60〜79歳
80歳以上
このデータだけを使うなら、80歳以上の補正は約1.50になります。
しかし、他の資料ではもっと大きな年齢差が示されています。
そこで次のデータを加えます。
Strength Levelを25%使用した理由
Strength Levelでは、非常に多くのユーザー記録からベンチプレス基準が作られており、年齢ごとの基準も公開されています。
現在の男性年齢別データでも、25〜40歳では同じ基準値が設定され、その後45歳、50歳、55歳……と低下していきます。
Strength Levelの大きなメリットは、
5歳刻みの変化を直接確認できること
です。
一方で、競技大会だけを対象としたデータではなく、ユーザーによる記録を含むデータベースです。
そのため、OpenPowerliftingよりは比率を下げて25%としました。
Strength Levelの補正値の計算
Strength Levelについても考え方は同じです。
25〜40歳の値を基準として、
とします。
例えば男性Intermediateの基準を使い、25〜40歳を212lb、60歳を158lbとすると、
となります。
60歳では約1.34です。
同じように計算すると、
15歳では、
20歳では、
45歳では、
50歳では、
70歳では、
80歳では、
となります。
Strength Levelだけを使うと、60歳以降の補正はかなり大きくなります。
Strength Level「Bench Press Standards」
McCulloch係数を15%使用
パワーリフティングでは、マスターズ選手を年齢補正して比較するために、McCulloch Age Coefficientsと呼ばれる係数が使用されてきました。
代表的な値は、
| 年齢 | McCulloch係数 |
|---|---|
| 40歳 | 1.000 |
| 45歳 | 1.055 |
| 50歳 | 1.130 |
| 55歳 | 1.225 |
| 60歳 | 1.340 |
| 65歳 | 1.480 |
| 70歳 | 1.645 |
| 75歳 | 1.835 |
| 80歳 | 2.050 |
です。
例えば60歳で100kgなら、
と補正されます。
既存の競技用年齢補正として参考になる一方、ベンチプレスだけを対象に作られた係数ではありません。
また、特に高齢になるほど補正量が大きくなります。
そのため、そのまま採用するのではなく、全体の15%としました。
Global Powerlifting Alliance「Master Age Formula」
Hernández-Ugalde 2022を15%使用
Hernández-Ugaldeは、OpenPowerlifting由来の競技記録を使い、男女のパワーリフティングおよびベンチプレスについて、年齢と競技成績の関係を分析しています。[2]
クラシック・エクイップドのベンチプレスも個別に分析され、年齢ごとの平均スコアに曲線を当てはめています。
その結果、パフォーマンスは若年期から上昇し、
27.67〜31.50歳付近でピーク
となったあと、年齢とともに低下する形になりました。[2]
今回の補正では、この年齢―パフォーマンス曲線をピーク付近=1.00になるように相対化して使用しています。
考え方は、
です。
は論文で推定された年齢における競技成績、
はピーク年齢です。
つまり、
ピーク年齢の推定成績に対して、対象年齢の推定成績がどのくらい低いか
を係数に変換しています。
この研究は非常に参考になりますが、年齢による変化を直接「kg」で示した研究ではなく、Wilks、IPF Points、GLPなどのスコアを使用しています。
また、van den Hoekらの研究と同様にOpenPowerliftingを利用しているため、完全に独立したデータではありません。
そのため重みは15%に抑えました。
Latella et al. 2018を10%使用
Latellaらは、15〜78歳の競技パワーリフター1,368名を、
- Sub-junior
- Junior
- Open
- Masters I
- Masters II
- Masters III
- Masters IV
に分類し、年齢と相対筋力の関係を調べています。[3]
男性ベンチプレスでは、Openカテゴリーの相対筋力が最も高く、
1.52±0.31
でした。
これに対して、
- Masters I:11.8%低下
- Masters II:19.7%低下
- Masters III:27.0%低下
- Masters IV:21.1%低下
という結果でした。[3]
例えばMasters IIIの27.0%低下を補正係数に変換すると、
残っている能力は、
なので、
となります。
Masters IIなら、
です。
一方、この研究ではMasters IVの低下率がMasters IIIより小さくなっています。
年齢が上がったのに補正値が逆に小さくなるため、そのまま5歳刻みの補正表として使用するのは適切ではありません。
サンプル数も最新のOpenPowerlifting大規模解析より少ないことから、全体への重みは10%としました。
なぜ単純平均ではなく重みを変えたのか
5つのデータをすべて20%ずつにする方法も考えられます。
しかし、データの性質はかなり違います。
例えば、
809,986件の競技記録を分析した研究[1]
と、
1,368名を対象とした研究[3]
を完全に同じ重みで扱う必要はありません。
また、Strength Levelは非常に多くのデータを持っていますが、競技大会の記録だけではありません。
McCulloch係数は実際の年齢補正として使いやすい一方、ベンチプレス単独の現代データから作った係数ではありません。
そこで今回は、
となるように配分しました。
最終的な式は、
です。
ここで、
- :van den Hoek / OpenPowerlifting由来
- :Strength Level由来
- :McCulloch係数
- :Hernández-Ugalde由来
- :Latella 2018由来
を表します。
繰り返しますが、この重み自体は統計学的に最適化して算出したものではありません。
データ量、ベンチプレスへの直接性、年齢の細かさ、データの新しさなどを考慮して設定した独自比率です。
データが存在しない年齢はどうした?
ここも重要です。
すべての研究に15歳、20歳、25歳……80歳まで5歳刻みの値が存在するわけではありません。
例えばvan den Hoekらの研究では、
12〜17歳
18〜35歳
36〜59歳
60〜79歳
80歳以上
という大きな年齢区分です。[1]
Latellaらの研究も、
40〜49歳
50〜59歳
60〜69歳
70歳以上
といったカテゴリーです。[3]
一方、Strength LevelやMcCulloch係数は、より細かい年齢の変化を確認できます。
そこで、ある年齢で利用できないデータを「0」として計算することはしていません。
使用可能なデータだけで再配分します。
基本式は、
です。
例えば本来、
であるところ、10%分のデータが利用できなかったとします。
すると残りは、
です。
OpenPowerliftingの35%は、
Strength Levelの25%は、
というように、残っているデータの比率を100%になるよう再配分します。
この方法により、データが存在しないという理由だけで補正値が不自然に低くならないようにしました。
5歳刻みの数字は「観測値そのもの」ではない
今回の表を見ると、
45歳1.06
50歳1.11
55歳1.16
60歳1.30
のように5歳刻みになっています。
しかし、すべての研究が5歳刻みで測定しているわけではありません。
そのため、最終表の1.06や1.30という数字そのものが、1つの研究で直接観測されたわけではありません。
元データの年齢区分を共通の尺度に直したうえで、より細かいStrength LevelやMcCulloch係数の年齢変化も利用し、複数データを統合して5歳刻みに整理したモデル値です。
この点は非常に重要です。
「60歳は科学的にちょうど1.30倍」
という意味ではありません。
最終的な年齢補正係数
以上を踏まえ、最終的に採用した値がこちらです。
| 年齢 | 独自年齢補正係数 |
|---|---|
| 15歳 | 1.20 |
| 20歳 | 1.03 |
| 25歳 | 1.00 |
| 30歳 | 1.00 |
| 35歳 | 1.00 |
| 40歳 | 1.00 |
| 45歳 | 1.06 |
| 50歳 | 1.11 |
| 55歳 | 1.16 |
| 60歳 | 1.30 |
| 65歳 | 1.37 |
| 70歳 | 1.44 |
| 75歳 | 1.53 |
| 80歳 | 1.79 |
計算途中ではできるだけ丸めず、最終的な表示段階で小数第2位に整理しています。
McCulloch係数より70代以降の補正を小さくした理由
今回の係数で特に大きな違いが出るのが高齢者です。
70歳では、
独自係数:1.44
McCulloch:1.645
80歳では、
独自係数:1.79
McCulloch:2.050
です。
McCullochをそのまま使うよりも、今回の係数では高齢者の補正を小さくしています。
この判断を考えるうえで重要なのが、近年の縦断的な研究です。
Latellaらは、競技パワーリフターの長期的な筋力変化を調査し、高齢になっても継続的なトレーニングによって筋力を維持・改善できる可能性を示しています。[5]
70歳を超える男性では若干の筋力低下が観察されたものの、その変化は年間約0.35%と小さいものでした。[5]
さらにWilf & Dunskyは、40歳以前と60歳以降の両方に競技記録を持つ61名のパワーリフター、合計3,379件の競技記録を分析しています。[4]
この研究では、年齢が筋力のばらつきを説明する割合は0.4〜15.6%にとどまり、男性ベンチプレスでは年齢に伴う有意な低下が確認されませんでした。[4]
長期間トレーニングを継続している競技者では、年齢だけで筋力低下を予測することは難しいという結果です。
この2つの研究は、今回の35%・25%・15%……という重み付き平均に直接追加したデータではありません。
算出された高齢者係数が大きすぎないかを確認するための妥当性チェック
として使用しています。
年齢補正には大きな限界がある
ここまでかなり細かく計算しましたが、年齢補正には明確な限界があります。
競技パワーリフターと一般トレーニーは違う
今回使用した主要研究の多くは競技パワーリフターを対象としています。
特にOpenPowerliftingのデータは、
高齢になってもパワーリフティングを継続できている人
です。
一般人口の平均的な筋力低下とは同じではありません。
実際、継続的な筋力トレーニングを行っている競技者では、一般人口より加齢による筋力低下が小さい可能性があります。[4][5]
年齢だけでベンチプレスの強さは決まらない
当然ですが、ベンチプレスの強さに影響するのは年齢だけではありません。
例えば、
- 体重
- 筋量
- トレーニング歴
- 競技歴
- フォーム
- 練習頻度
- 過去のケガ
などによって大きく変わります。
同じ60歳でも、ベンチプレスを30年間続けている人と、始めて半年の人ではまったく違います。
年齢補正は、それらをすべて消すものではありません。
横断データと縦断データは意味が違う
今回のデータには、
異なる年齢の人たちを比較した研究
と、
同じ競技者を長期間追跡した研究
の両方が含まれます。
例えば、30歳の競技者と70歳の競技者を比較して差があったとしても、
「同じ人が30歳から70歳になると、その分だけ弱くなる」
とは限りません。
70歳まで競技を続けている人だけがデータに残るという影響もあります。
そのため、今回の係数は「加齢によってあなたの筋力が何%落ちるか」を予測する式ではありません。
使用したデータは完全に独立ではない
もう一つ重要な点があります。
van den Hoekらの研究[1]とHernández-Ugalde[2]は、どちらもOpenPowerlifting由来のデータを利用しています。
つまり、
5つの資料=完全に独立した5つの集団
ではありません。
そのため、今回の重み付き平均を厳密なメタ解析のように扱うことはできません。
あくまで、異なる方法で示された年齢変化を比較し、実用的な補正値を作ったものです。
年齢補正は「100kgを130kgに変える魔法の数字」ではない
例えば60歳で100kgを挙げ、
になったとしても、
「60歳で100kg挙げれば30歳の130kgと完全に同じ価値」
と断言することはできません。
年齢による筋力差は、どの集団を調べるかによって変わります。
Strength Levelでは比較的大きく低下します。
OpenPowerliftingの大規模データでは、それより小さい低下になります。
長期間競技を継続している選手だけを見ると、さらに低下が小さい可能性も示されています。[4][5]
つまり、唯一の正解となる補正係数はありません。
今回の係数は、
複数の異なるデータを使い、極端に大きくも小さくもならないように作った比較用の指標
と考えるのが適切です。
結論|年齢が違う人のベンチプレスは重量だけでは比較できない
ベンチプレスの能力は年齢によって変わります。
今回確認した研究では、ベンチプレスを含むパワーリフティングのパフォーマンスは20代後半〜30代付近で高くなり、その後は年齢とともに低下する傾向が確認されています。[1][2][3]
一方で、その低下量は研究によってかなり違います。
特に長期間トレーニングを続けている高齢競技者では、年齢だけでは筋力低下を十分に説明できないというデータもあります。[4][5]
そのため、本サイトでは1つの研究やMcCulloch係数をそのまま使用するのではなく、複数のデータを組み合わせて、
15歳:1.20
20歳:1.03
25〜40歳:1.00
45歳:1.06
50歳:1.11
55歳:1.16
60歳:1.30
65歳:1.37
70歳:1.44
75歳:1.53
80歳:1.79
という独自の年齢補正係数を設定しました。
この係数は、
「あなたが年齢によって何kg弱くなったか」を測るものではありません。
異なる年齢のベンチプレス記録を、同じ重量だけで比較するよりも、もう少し公平に比較するための目安です。
ベンチプレスの強さを見るときは、
重量だけではなく、体重や年齢も含めて評価する。
そのための1つの方法として活用してください。
実際に自分の年齢・体重だと一般的にどれぐらいの強さなのか気になる方は「ベンチプレス年齢・体重換算計算機」をご利用下さい。

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参考文献
[1] van den Hoek DJ, Beaumont PL, van den Hoek AK, Owen PJ, Garrett JM, Buhmann R, Latella C. Normative data for the squat, bench press and deadlift exercises in powerlifting: Data from 809,986 competition entries. Journal of Science and Medicine in Sport. 2024;27(10):734-742. doi:10.1016/j.jsams.2024.07.005.
[2] Hernández Ugalde JA. The Performance of Powerlifting Athletes During Their Lifetime. MHSalud: Revista en Ciencias del Movimiento Humano y Salud. 2022;19(1):41-54. doi:10.15359/mhs.19-1.4.
[3] Latella C, van den Hoek D, Teo WP. Factors affecting powerlifting performance: an analysis of age- and weight-based determinants of relative strength. International Journal of Performance Analysis in Sport. 2018;18(4):532-544. doi:10.1080/24748668.2018.1496393.
[4] Wilf O, Dunsky A. Age is a poor predictor of maximal strength in competitive powerlifters. Kinesiology. 2025;57(2):212-219. doi:10.26582/k.57.2.7.
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