
ベンチプレスで同じ重量を何セットも繰り返していると、
「1セット目は余裕だったのに、3セット目から急に重くなった」
「5セット目になると、同じ回数が全然できない」
ということがあります。
では実際、セットを重ねることでベンチプレスのパフォーマンスはどれくらい低下するのでしょうか。
今回は、僕が保有している実際のトレーニングデータから、限界付近までベンチプレスを行ったセッションを抽出。
1セット目を100%として、
2セット目、3セット目、4セット目、5セット目でどれくらいレップ数が落ちるのか
を分析しました。
先に言っておくと、今回対象にしているのは余裕のある軽いセットではありません。
RPE9.5〜10程度と推定される、かなり限界に近いトレーニングを中心に分析しています。
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では、先に結果から見ていきましょう。
- ベンチプレスはセットを重ねると何回まで落ちる?
- 1セット目と同じ回数を維持できる人はどれくらい?
- ここからは詳しい分析
- 今回は「余裕のあるセット」をできるだけ除外した
- RPE9.5〜10は主観評価ではなく実際の結果から推定した
- 100kg・120kg達成コースの大規模データでも限界判定を確認
- 限界付近の10回・8回・5回はトップシングルの何%だった?
- セット単位で分析できた高確度データは48セッション
- 限界付近では5セット目に約73.5%まで低下した
- セットを重ねるほどレップ数が落ちる差は統計的にも確認された
- 3セット目の平均維持率は86%だった
- 4セット目では約20%、5セット目では約27%低下
- 最初にレップが落ちるセットは意外とバラバラだった
- レップが落ち始めた最初のセットでは平均約19%低下
- 外的要因を除外しなくても結果はほとんど変わらなかった
- 今回の分析から分かること・分からないこと
- ベンチプレスは結局何セットやればいい?
- まとめ|限界付近では5セット目に約27%パフォーマンスが低下した
ベンチプレスはセットを重ねると何回まで落ちる?
まずは難しい話を抜きにして、結果を見てみましょう。
1セット目のパフォーマンスを100%とすると、平均的なレップ維持率は以下のようになりました。
| セット | レップ維持率 | 10回基準 | 8回基準 | 5回基準 |
|---|---|---|---|---|
| 1セット目 | 100% | 10回 | 8回 | 5回 |
| 2セット目 | 93.9% | 約9.4回 | 約7.5回 | 約4.7回 |
| 3セット目 | 86.0% | 約8.6回 | 約6.9回 | 約4.3回 |
| 4セット目 | 79.8% | 約8.0回 | 約6.4回 | 約4.0回 |
| 5セット目 | 73.5% | 約7.4回 | 約5.9回 | 約3.7回 |
つまり、1セット目と比べると、
2セット目で約6%低下
3セット目で約14%低下
4セット目で約20%低下
5セット目では約27%低下
という結果です。
例えば1セット目に10回できたとすると、平均的なイメージでは、
10回 → 9〜10回 → 8〜9回 → 約8回 → 7〜8回
程度まで低下します。
もちろん実際には0.4回、0.6回というレップはありません。
この数字は、多数のセットを平均したときのパフォーマンス水準だと考えてください。
この数字は、
【ベンチプレス】SNSに騙されるな。10回3セットはMAX重量が伸びます。
で
1セット目が10回で限界なら2セット目は7回、3セット目は5レップとかになってしまうのが普通である、という理屈ですね。
これは、「なるほど、確かに」と思ってしまいそうですが、つまるところ「スタミナ切れ」です。
筋持久力が足りないことが原因ですね。
中略
1セット目で10レップが出来て、11レップ目が絶望的に行けない状態でも、訓練すれば2セット目も10レップ行けるようになります。悪くても8レップは行けるはずです。
と話しています。
この時は感覚値でしたが、実データを分析してみてもおおよそこのぐらいでした。

つまり、1セット目がギリギリだったとしても、5セット目に8回は不可能な数字ではないということです。
1セット目と同じ回数を維持できる人はどれくらい?
次に、
最終的に5セット以内でレップ数が低下した48セッションでは、1セット目と同じ回数を何セット目まで維持できたのか
を調べました。
ここで注意したいのは、今回の48セッションは、もともと5セットの途中で実レップ数が低下したセッションだけを抽出しているという点です。
そのため、以下の数字は「限界付近のトレーニング全体で何%が維持できたか」ではなく、
最終的にどこかのセットでレップが落ちたセッションの中で、何セット目まで維持できたか
を示しています。
結果は、
2セット目まで維持できた:75.0%
3セット目まで維持できた:47.9%
4セット目まで維持できた:25.0%
でした。
つまり、最終的に5セット以内でレップが落ちたセッションでも、
2セット目までは4分の3が1セット目と同じ回数を維持
していました。
しかし、
3セット目まで維持できたのは約半分
です。
さらに、
4セット目まで維持できたのは4分の1
まで減ります。
ここからは詳しい分析
ここまでが簡単な結論です。
ここからは、
- どのデータを使ったのか
- どうやって限界付近を判定したのか
- 本当にセット数による差があると言えるのか
- この分析にはどんな限界があるのか
を詳しく説明します。
今回は「余裕のあるセット」をできるだけ除外した
セット疲労を分析するときに大きな問題があります。
それは、
余裕のある重量では、そもそも後半セットでもレップ数が落ちない
ことです。
例えばRPE7程度で、
10回 → 10回 → 10回 → 10回 → 10回
とできるセッションを大量に入れてしまえば、
「5セットやってもほとんど疲れない」
という結果になってしまいます。
しかし今回知りたかったのは、
限界に近い状態ではセットを重ねることでどれくらいパフォーマンスが落ちるのか
です。
そこで今回は、余裕のあるセッションを主解析から外し、
RPE9.5〜10程度に相当すると推定できる限界付近のデータ
を中心に分析しました。
RPE9.5〜10は主観評価ではなく実際の結果から推定した
注意してほしいのは、今回の「RPE9.5〜10」は本人が申告したRPEではないということです。
実際のセット結果から推定しています。
例えば、
10回 → 10回 → 9回 → 8回 → 7回
となった場合。
2セット目までは10回できていますが、3セット目からは同じ重量で10回できなくなっています。
つまり2セット目の時点では、
ほぼ限界に近いところまで到達していた
と考えることができます。
そして3セット目以降は、実際に目標回数を維持できなくなっています。
こうした、
実際に次のセットでレップ低下が確認されたセッション
を重視しました。
100kg・120kg達成コースの大規模データでも限界判定を確認
今回の詳細なセット分析とは別に、
ベンチプレス100kg・120kg達成コース
の大規模なトレーニング記録も使って、限界付近の判定方法が実際のプログラム進行と一致するか確認しました。
5回・8回・10回×5セットの中で、
「失敗」または「ギリギリ」
と記録されていた限界付近のセッションは、
251セッション・39人
ありました。
内訳は、
- 5回:76件
- 8回:86件
- 10回:89件
です。
この251件のうち、約79.7%では次回、
10回 → 8回
8回 → 5回
5回 → 10回
という、予定された回数帯の変更が行われていました。
さらに回数帯が実際に変更された502件を確認すると、
98.8%で変更直前の重量が、その回数帯の中で最も重い重量
になっていました。
つまり、
回数帯が終了する直前は、その回数帯でかなり限界に近づいていた
と考えることには一定の妥当性があります。
限界付近の10回・8回・5回はトップシングルの何%だった?
大規模データでは、その日のトップシングル重量も記録されているため、
限界付近の5セット重量 ÷ トップシングル重量
も確認しました。
人物ごとの記録数の偏りを補正すると、
10回×5セット:約79.0%
8回×5セット:約83.0%
5回×5セット:約89.3%
でした。
95%信頼区間は、
- 10回:76.7〜81.3%
- 8回:81.6〜84.5%
- 5回:87.1〜91.9%
です。
つまり今回抽出した限界付近のトレーニングは、かなり高い負荷で行われていたことが分かります。
セット単位で分析できた高確度データは48セッション
次に、セットごとの実際のレップ数が残っている練習報告データを使いました。
同じ重量を5セット行い、途中から実レップ数が低下していたセッションは、
61セッション・7人
ありました。
ここから、
- 肩や胸の痛み
- ラックへの接触
- 足の攣り
- 数え間違い
- 明らかな記録不整合
- 一度大きくレップが落ちた後に元の回数へ戻る特殊ケース
など、通常の筋疲労以外の影響が強いものを除外。
最終的に、
48セッション
6人
240セット
を高確度群として分析しました。
限界付近では5セット目に約73.5%まで低下した
人物ごとに記録数が異なるため、特定の人の大量データだけで結果が決まらないように、
まず人物ごとに平均を出してから、それぞれの人物を同じ重みで集計
しました。
その結果が以下です。
| セット | レップ維持率 | 低下率 |
|---|---|---|
| 1セット目 | 100.0% | — |
| 2セット目 | 93.9% | −6.1% |
| 3セット目 | 86.0% | −14.0% |
| 4セット目 | 79.8% | −20.2% |
| 5セット目 | 73.5% | −26.5% |
かなりきれいに低下しています。
特に、
3セット目:−14.0%
4セット目:−20.2%
5セット目:−26.5%
と、セットを重ねるほど疲労が蓄積していました。
セットを重ねるほどレップ数が落ちる差は統計的にも確認された
ここから少し統計的な話です。
同じ人物のデータを何百セットも独立したデータとして扱うと、
実際よりもサンプル数が多いように見えてしまいます。
そのため今回は、
人物を独立した単位
としてSet1〜Set5を比較しました。
Friedman検定を行った結果、
p = 0.000095
でした。
一般的にはp値が0.05未満であれば、
「偶然のばらつきだけでは説明しにくい差」
と判断します。
今回は0.000095なので、
セットを重ねるほどレップパフォーマンスが低下する傾向はかなり明確
だったと言えます。
ただし、
「すべての人が必ずこの割合で落ちる」
という意味ではありません。
3セット目の平均維持率は86%だった
セットごとに見ると、
2セット目ではまだ約94%
を維持しています。
しかし3セット目になると、
約86%
です。
つまり、
3セット目では1セット目より平均約14%パフォーマンスが低下
していました。
10回を基準にすれば約8.6回。
8回なら約6.9回。
5回なら約4.3回。
この結果を見ると、
3セット目はすでに「1セット目と同じ条件」ではない
ことが分かります。
4セット目では約20%、5セット目では約27%低下
さらにセットを重ねると、
4セット目:約79.8%
5セット目:約73.5%
でした。
つまり1セット目からの低下率は、
4セット目:約20%
5セット目:約27%
です。
特に5セット目では、
1セット目の4分の3程度までパフォーマンスが落ちる
計算になります。
限界付近で5セット行うことは、
同じ重量をただ5回繰り返しているわけではありません。
後半セットでは、かなり疲労した状態で同じ重量を扱っていることになります。
最初にレップが落ちるセットは意外とバラバラだった
では、
何セット目で最初に目標レップを維持できなくなるのか?
も調べました。
48セッションでは、
| 最初にレップが落ちたセット | 件数 |
|---|---|
| 2セット目 | 12 |
| 3セット目 | 13 |
| 4セット目 | 11 |
| 5セット目 | 12 |
でした。
かなり均等です。
つまり、
「限界なら4〜5セット目で落ちる」
という単純なパターンではありません。
1セット目では目標回数ができても、
2セット目でもう崩れる場合があります。
逆に、4セット目まで維持し、最後の5セット目で初めて崩れる場合もあります。
カイ二乗検定でも、
p = 0.983
となり、特定のセットに偏っているとは言えませんでした。
レップが落ち始めた最初のセットでは平均約19%低下
最初に目標回数を割ったセットについても確認しました。
そのセットの平均レップ維持率は、
81.2%
でした。
つまり、
限界を超えて初めて失敗したセットでは、平均約19%レップ数が低下
していました。
中央値では、
目標回数から1回減
です。
例えば10回目標なら9回。
8回目標なら7回。
5回目標なら4回。
というケースが典型的です。
そこからさらにセットを重ねることで、レップ低下が大きくなっていきます。
外的要因を除外しなくても結果はほとんど変わらなかった
今回、主分析では痛みやラック接触などを除外しました。
では、それらを含めると結果は大きく変わるのでしょうか。
除外前の61セッションでは、
100 → 94.8 → 86.2 → 81.8 → 71.3%
でした。
高確度48セッションでは、
100 → 93.9 → 86.0 → 79.8 → 73.5%
です。
ほとんど同じ傾向です。
特に3セット目は、
86.2%
と
86.0%
で、ほぼ一致しています。
そのため今回の結果は、
数件の特殊なセッションだけによって作られた可能性は低い
と考えています。
今回の分析から分かること・分からないこと
今回の結果から、
限界付近のベンチプレスでは、セットを重ねるほど実レップパフォーマンスが大きく低下する
ことはかなり明確に確認できました。
特に、
3セット目:約14%低下
4セット目:約20%低下
5セット目:約27%低下
という結果は、セット数を考えるうえで参考になると思います。
一方、注意点もあります。
今回の詳細分析は48セッションありますが、対象者は6人です。
そのため、
すべてのベンチプレッサーが必ず同じ割合で低下する
とは言えません。
また、
「RPE9.5〜10相当」
は直接測定された主観RPEではなく、実際のレップ低下やトレーニング進行から推定したものです。
休憩時間、睡眠、食事、トレーニング歴なども完全には統一されていません。
今回の結果は、
実際のトレーニング現場で得られたデータから確認された傾向
として見るのが適切です。
ベンチプレスは結局何セットやればいい?
今回の結果だけから、
「3セットが正解」
「5セットはやる意味がない」
という結論にはなりません。
5セット行えば、当然3セットよりトレーニング量は増えます。
一方で今回の分析では、
3セット目の時点で約14%
5セット目では約27%
パフォーマンスが低下していました。
つまり、
セット数を増やすほど、同じ重量・同じ回数を維持する難易度は急激に上がる
ということです。
例えば、
「100kgを10回できた」
という記録だけを見ても、
100kg×10回×1セットなのか、
100kg×10回×5セットなのかでは、
トレーニングとしての意味はかなり違います。
セット数も含めて評価する必要があります。
まとめ|限界付近では5セット目に約27%パフォーマンスが低下した
今回、実際のベンチプレスのトレーニングデータから、限界付近のセット疲労を分析しました。
結果をもう一度まとめると、
| セット | レップ維持率 | 1セット目からの低下 |
|---|---|---|
| 1セット目 | 100.0% | — |
| 2セット目 | 93.9% | 約6% |
| 3セット目 | 86.0% | 約14% |
| 4セット目 | 79.8% | 約20% |
| 5セット目 | 73.5% | 約27% |
という結果でした。
また、
2セット目まで同じ回数を維持できたのは75%
3セット目まで維持できたのは47.9%
4セット目まで維持できたのは25%
でした。
つまり限界付近では、
3セット目には約半数が1セット目と同じ回数を維持できなくなり、5セット目では平均パフォーマンス自体も約4分の3まで低下する
ということです。
ベンチプレスのセット数を考えるときは、
単純に、
「何kgを何回やったか」
だけではなく、
「それを何セット行ったのか」
まで考える必要があります。
同じ重量・同じ回数でも、
1セット目と5セット目では難易度がまったく違います。
今回の実データからも、それがかなりはっきり確認できました。
