
インクラインベンチプレスは、ベンチプレスの補強種目として「大胸筋上部を鍛えたい人に必須」と言われることが多い種目です。
筋トレ系の情報でも「大胸筋上部はまずインクラインを入れろ」といったアドバイスはよく見かけます
しかし、大胸筋上部を筋肥大させるためにせよベンチプレスそのものを本気で伸ばすにせよ、本当に全員に必要なのか——
これは人によって大きく分かれる部分というのが実際です。
実は筋トレ開始当初は「強くなるためにインクラインを入れるべきだ」と思って続けていました。
しかし、ベンチプレスを深く追求していく中で、あるタイミングから「インクラインを続けるメリットがなくなった瞬間」がありました。
そこからフォームの特徴を洗い直し、動作と刺激の方向性を分析し、補強種目との相性を徹底的に検証していくと、インクラインを外す明確な理由が次々と浮かび上がってきました。
インクラインベンチプレスを辞めた理由
理由①:元々ベンチプレスで大胸筋上部に効きやすかったから
僕のベンチプレスのフォームは、もともと「肩関節の屈曲優位」のフォームです。
肩関節の屈曲とは、一般的に「気をつけ」から「前ならえ」をするように、腕を前方へ振り上げる動作のことを指します。
ベンチプレスの動作では
- バーをトップポジション(腕がベンチ台と垂直の状態)から胸の下部あたりに下ろし
- そこから「お腹側から斜め上へ押す」
ような軌道を自然に取りやすいフォームです。
この押し方は、解剖学的に見ると 大胸筋上部(鎖骨部)が最も働きやすい動き です。
なぜなら、大胸筋上部の筋繊維は鎖骨から上腕骨に向かって斜め下に走行しているため、肩関節の屈曲や、上方向への押し出しで大きな力を発揮しやすい構造になっているからです。
つまり、僕のフォームは骨格上や動きのクセとして、自然と大胸筋上部(鎖骨部)を使う押し方が最も得意な状態になります。
このようなフォームの人間がインクラインベンチプレスを行うとどうなるか。
多くの人は角度をつけることで「上部に効く」「押す軌道が変わる」と考えますが、屈曲優位の人間の場合は、ベンチ台を傾けても 本質的な押し方が変わりません(大胸筋上部を使った屈曲動作)。
肩関節の動きがそもそも“前ならえ方向”で力を発揮しやすいので、ベンチの角度を変えても体の動かし方そのものが変わらないということです。
結果として、
- インクラインにしても押す角度がほぼ同じ
- 筋活動が変わらない
- それなのに扱える重量だけは確実に落ちる
という、効率の悪いトレーニングになっていました。
言い換えると、僕にとってのインクラインは “刺激は変わらず、負荷だけ下がる種目” でした。
大胸筋上部に効かせたいわけでもなく、重量が伸びるわけでもなく、ベンチ本体の強化に繋がる刺激が得られない。
後述しますが、ベンチプレスが強くなるためには、「不要な疲労」をどれだけ排除できるかが非常に重要です。
その点でも、インクラインは僕にとってメリットよりデメリットが上回っていました。
「インクラインベンチプレスは三角筋前部にも刺激が入るから意味がある」
と思う方もいらっしゃると思います。
しかし、三角筋前部を狙うのであれば、インクラインのように「角度も負荷も中途半端」な種目ではなく、オーバーヘッドプレスのように、肩の屈曲を最大限使う特化種目を行った方が圧倒的に効率が良いと考えています。
オーバーヘッドプレスは、
- 肩関節の屈曲をダイレクトに使える
- 負荷の方向が明確
- 三角筋前部を高強度で狙える
という点で、インクラインより目的に対して遥かに最適です。
また
- 肩甲骨の上方回旋
- 肩甲骨の挙上
といった肩関節の安定性に必要な動作、筋群、ローテータカフを鍛えることもできます。
そのため、僕にとって(←ここ重要)インクラインベンチプレスは
ベンチプレスの下位互換であり、オーバーヘッドプレスの下位互換でもある、完全に中途半端な位置づけの種目
となってしまいました。
理由②:リソースの無駄遣いを避ける
補助種目に使えるリソースは限られています。
1つの補助種目を入れるということは、その分だけ
- 練習頻度
- セット数
- 回復能力
- 技術練習の時間
- 中枢疲労の許容量
これらを分配しなければなりません。
だからこそ、ベンチプレスを本気で伸ばすには、「役割が被っているのに効果が薄い種目」は思い切って削る判断が必要です。
ベンチプレスを伸ばす上で一番重要なのは、「必要な動作にできる限りリソースを集中させること」です。
誰しもトレーニング時間は限られているため、どれだけ効率良く
- ベンチに直結する動作(ベンチプレス)
- ベンチに間接的に寄与する体を整えるために行う動作(OHP、ディップス)
を積み上げられるかが、伸びのスピードに直結します。
その観点で見ると、インクラインはベンチと動作が被りすぎていました。
フォームが屈曲優位な僕にとっては、インクラインで得られる刺激がベンチ本体と差別化されておらず、疲労だけが増えて練度向上の邪魔になる状態です。
同じ屈曲系の補強なら、より明確に特化できるオーバーヘッドプレスのほうが合理的でした。
結果として、ベンチプレスの技術練習と必要刺激の蓄積に時間を集中できるようになり、トレーニング全体の効率が大幅に向上。
種目を増やすことより、不要なものを削って「必要な刺激だけ残す」ことこそ、重量を最速で伸ばすための近道です。
これは多くの人が陥りやすい罠なので注意しましょう。
コーチングをしていると
- ベンチプレス
- インクラインベンチプレス
- インクラインスミス
- インクラインダンベルプレス
のように同じ箇所の負荷が集中しまくっているケースをよく見かけます。
そのせいで
- ベンチプレスの頻度とセット数
- かけられる時間の減少
- フォームが上達せず
- 重量が伸びない
という現象が起こります。
可動域や刺激の違い(ストレッチ、収縮)はありますが、それよりも重要なのは
何キロで行っているか?
です。
重量が低いのに刺激を変えてもさほど意味はありません。
まずは重量を伸ばすために、種目数を減らして一つの種目を集中的に伸ばす方が良いと考えています。
インクラインベンチプレスを取り入れた方がいい人
ここが非常に重要なのですが
僕にとってインクラインベンチプレスが不要でも、あなたにとっては必須種目になる可能性がある
ということです。
理由としてはフォームの特性です。
僕の場合は屈曲優位のフォームですが、反対に内転優位のフォームもあります。
水平内転はどちらのフォームにも共通なので省略します。
正確には
- 水平内転/屈曲優位フォーム
- 水平内転/内転優位フォーム
となります。
肩関節の内転は「手を横に広げた状態」から「気をつけ」をする動きです。
ベンチプレスの動作では
- バーをトップポジション(腕がベンチ台と垂直の状態)から胸の乳頭の少し下あたりに下ろし
- そこから「真上へ押す」または意識的には「足側へ押す」
ような軌道を自然に取りやすいフォームです。
この押し方は、解剖学的に見ると 大胸筋下部(腹部)が最も働きやすい動き です。
なぜなら、大胸筋下部の筋繊維は腹筋上部から上腕骨に向かって斜め下に走行しているため、肩関節の内転や、下方向への押し出しで大きな力を発揮しやすい構造になっているからです。
つまり、内転優位のフォームは骨格上や動きのクセとして、自然と大胸筋下部(腹部)を使う押し方が最も得意な状態になります。
このようなフォームの特性を持っている場合、ベンチプレスで大胸筋上部は鍛えづらいです。
ベンチプレスの1RM向上のためにもボディメイクのためにも相対的に大胸筋上部が弱点となりやすいです。
なので、インクラインベンチを取り入れて自分のベンチプレスの動作(この場合は内転)の逆(屈曲)を行うことで大胸筋全体の筋出力の安定や形の良さに繋がります。
インクラインベンチプレスをやめた理由|まとめ
このように補助種目を選ぶ場合は
目的の異なる動作を行う種目を取り入れることが非常に重要
です。
前述の通りリソースには限りがあるので、同じような動きをいくら取り入れても効果は限定的です。
インクラインベンチプレスを取り入れる時は自分のベンチプレスのフォームの動作特性や刺激が入りやすい部位を意識しつつ、種目の目的が被っていないかを確認することが重要です。
