
ベンチプレスを強くなるために色々と調べていると、「トップシングル」という言葉が出てくることがあると思います。
僕もそうだったんですけど、初めて聞いた時はトップシングルとはなんなのか?というのが良く分かりませんでした。
その意味や目的、正しい実施方法について理解している人は意外と少ないです。
今も多くの方にメニュー作成をしているんですが
トップシングルってなんですか?
と聞かれることは多いです。
そこで、この記事では
- トップシングルとはなんなのか?
- トップシングルを行う目的
- MAX挑戦との違いは?
- トップシングルを行う頻度、優先度
- トップシングルを行う時の注意点
- 筋肥大には必要ない?
- 神経系が疲労するからやらない方が良い?
- トップシングルのやり方
について解説します。
トップシングルをベンチプレストレーニング取り入れることで、MAX重量が伸び、結果的に筋肥大にも良い影響を与えるので、しっかりと理解して取り入れていきましょう。
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ベンチプレスのトップシングルとはなんなのか?
「トップシングル」とは、その日に挙げる一番重い重量(MAX重量の90〜100%前後)を「1回だけ」挙げるセットを意味します。
「デイMAX」「デイリーMAX」「その日のMAX」と言われることもあります。
これは通常の「メインセット」とは異なり、回数をこなすのではなく、あくまで高重量での1回の動作に集中して行うシングルセットです。
ベンチプレスでトップシングルを行う目的
トップシングルを実施する主な目的は、以下の4つに集約されます。
1. 神経系への刺激、強化
ベンチプレスでMAX重量を伸ばすためには、筋肉を大きくすることに加えて、筋力を上げることが重要です。
筋力を上げるためには大きくした筋肉を最大限に使用するために神経を鍛える必要があります。
筋肉は50kgを上げる時には50kgを上げるために必要な分しか筋肉を使いません。
筋肉的には80kg上げる力があっても50kg分の力しか使いません。
神経から筋肉を動かすための指令が50kg分しか出ないので、筋肉も50kg分しか力を発揮できないということです。
なので50kgの練習しかしていないと80kgを持ち上げる力は発揮できるようになりません。
80kgを上げたい場合は80kgを持つトレーニングをして、神経が「80kgを上げろ!」という指令を出せるようにトレーニングしていきます。
トップシングルはメインセットと違って、MAX重量の90%~限界に近い高重量を扱います。
この時、神経系が「この重量を支えなければならない」という刺激を受け、持っている筋肉をできる限り動員できるようになります。
これによって、MAX重量近い重量で力が出しやすくなります。
神経系強化という意味ではケツ上げベンチやスリングショットも同様の狙いがあります。
ケツ上げやスリングショットでトップシングルを行う場合はさらに高い神経刺激が入ることになりますね。
疲労との兼ね合いになりますが、これらも選択になるかもしれません。
2. 高重量のフォーム最適化
10回上げることできる重量でベンチプレスを行うフォームで、1回ギリギリの重量を上げることができるとは限りません。
なぜなら1回上げる時にかかる負荷は10回上げる時の負荷と全く違うからです。
トップシングルを行う目的は1回上げることができる重量のためのフォームを作っていくことです。
10回上げるフォームでは高重量が上がらないケースはよくありますが、1回上げるためのフォームで10回を上げられないということはありません。
つまり高重量でフォームを作っておくと、重量を軽くしても通用するということです。
逆は通用しません。
トップシングルの実施は高重量でのフォーム最適化の目的もあります。
3. セット前の神経への刺激
トップシングルで重い重量を持っておくと、セット重量で思ったよりも軽く感じるということが起こります。
これはテタヌス刺激後増強1)2)と呼ばれる反応で、一度神経が刺激されるとしばらくの間、神経伝達の効率が良くなるという仕組みです。
神経伝達の効率が良くなっているので、セットの重量も上がる可能性があるということです。
ここに関しては、トップシングルでの疲労度にもよるので一概には言えませんが、そういった効果があることは覚えておいても良いかもしれません。
4. MAX挑戦のための準備
「MAX挑戦」は年に数回しかしない、というトレーニーも多いですが、トップシングルはその準備段階として有効です。
MAX重量の90%~95%程度を日頃から持っておいて
「今日は行ける!」
と思った時にMAX挑戦をするのも有効です。
日頃からある程度の高重量に慣れていないと、急にMAX挑戦をした時に十分に神経が適応しておらずMAX更新が難しくなります。
MAX挑戦での成功率を上げるためには、日常的に高重量に慣れておく必要があります。
トップシングルとMAX挑戦との違いは?
トップシングルとMAX挑戦は混同されがちですが、実際は違うものです。
正確にはトップシングルの取り組みの中にMAX挑戦も含まれますが、ここではあえて分けて考えます。
両者の違いを理解することで、目的に応じたトレーニングが可能になります。
| 項目 | トップシングル | MAX挑戦 | 
|---|---|---|
| 目的 | 神経系の刺激、フォーム練習、セットの準備、MAX挑戦の準備 | 記録の測定、自己ベスト更新 | 
| 頻度 | 毎回 | 年数回(1ヶ月に1回程度が目安) | 
| 精神的負荷 | 中〜高 | 非常に高い(プレッシャー大、自信の喪失) | 
| 身体的リスク | 中〜高 | 非常に高い(フォームの崩れ・ケガのリスク) | 
| 位置づけ | トレーニングの一環 | イベント | 
トップシングルは「準備」、MAX挑戦は「勝負」
トップシングルは、MAX挑戦に向けた準備や、日常的な神経系トレーニング、フォームの微調整が主目的です。
あくまで練習、トレーニングの一環として行います。
一方、MAX挑戦は自分の限界を試す場であり、「勝負」です。
ある意味、これは本番と言っても良いかもしれません。
MAX挑戦はトップシングルに比べて相対的にリスクが高いので、無闇矢鱈に実施しないことが重要です。
トップシングルを行う頻度、優先度
トップシングルは練習毎に行うのが基本です。
しかし、身体の状態やケガの状況、疲労具合によっては実施しないこともあります。
基本は練習毎ですが、状況に応じて変更しましょう。
時間の関係でトップシングルを行うかセットを行うか迷うこともあるかもしれません。
その時はセットを優先しましょう。
トップシングルはベンチプレスのMAX重量を上げるために必要な練習ですが、より優先するべきはセット練習です。
トップシングルばかりをやっていてもMAX重量の更新は可能性が低いですが、セットだけでも実施していればMAX更新の可能性はあります。
優先順位は
セット > トップシングル
です。
トップシングルを行う時の注意点
トップシングルは非常に効果的なトレーニングですが、同時にリスクも伴います。
特に初心者は以下の点に注意する必要があります。
1. 必ずウォームアップを行う
トップシングルは高重量を扱うため、ウォームアップは念入りに行う必要があります。
まずは15分〜30分のストレッチ、モビリティーワークから始めます。
100kgのトップシングルを行う場合は
- 20kg×好きなだけ
- 40kg×1~5回
- 60kg×1~3回
- 80kg×1回
- 90kg×1回
- 95kg×1回
というように少しずつ重量を上げて回数を減らしていきます。
この段階で重要なのは、20kgのアップ段階からトップシングルを持つつもりでフォームを組むということです。
軽い重量でのアップをないがしろにすると、トップシングルで十分に力を発揮できないので、アップはしっかりやりましょう。
2. フォームが崩れないように実施する
目的は「1回を挙げること」ではなく、「キレイに1回を挙げること」です。
フォームが崩れれば、ケガのリスクが跳ね上がります。
MAX重量への準備ということも含めて、良いフォームで行うことが非常に重要です。
「挙がるか」「挙がらないか」に注力し過ぎないようにしましょう。
3. 疲労、ケガを考慮する
高重量を扱うことで筋肉だけでなく関節や腱にも負担がかかります。
関節などに違和感があれば中止する勇気も必要です。
正直、ケガをするぐらいならやらない方が良いです。
疲労に関しては塩梅が難しいところではあります。
疲労が溜まっているからといって、やらないという選択ばかりしていくと強くなりません。
とは言え疲労が溜まり過ぎている場合はオーバーワークになりかねません。
一つの目安として、トップシングルでMAX重量の90%が挙がらなくなったらトップシングルを休止しても良いと思います。
それ以上、無闇にやっても疲労が蓄積する一方で、トレーニングとして良い方向に行かないことが多いです。
トップシングルは筋肥大には必要ない?
特にボディメイク系の発信において
1回高重量のセットは筋肥大に効果がないので必要ない
という意見を聞きます。
これは筋肥大に重要なレップ数は5~12レップである、という理論に基づいています。
しかし、これは偏った考えです。
確かに筋肥大に直接的に影響を与えるのは5~12レップです。
しかし、1回高重量のトップシングルを行うことで神経系の適応が起こり、筋力が向上、結果的にセット重量の向上に影響を与えます。
やるか、やらないかを選択する上ではセット > トップシングルですが、初めから「やる必要はない」と決めつけてしまうのは筋肥大の可能性を逃している可能性があります。
トップシングルの必要性を正しく判断して、トレーニングに取り入れるようにしましょう。
トップシングルは神経系が疲労するからやらない方が良い?
トップシングルを含む高重量のトレーニングは
神経系が疲労するのでやらない方がいい
という意見も聞いたことがあると思います。
これは半分あっていますが、半分は間違っています。
確かに高重量でのトレーニングは神経系の疲労が大きいです。
そしてこの神経系の疲労は回復するのに1週間ほどかかると言われています。
なので、高重量のトレーニングは神経系が疲労するので行わない方が良いという発信があるのですが
トップシングルでは神経系が溜まり過ぎるような組み方をしないというのが重要です。
トップシングルを行う際に「毎回MAX重量を持つ人」や「毎回MAX挑戦をする人」がいますが、これでは確かに神経系の疲労が溜まってしまい中長期的なパフォーマンスが低下します。
こういった取り組みは前述の「トップシングルとMAX挑戦の違い」の通り行わない方が良いです。
一方で
神経系に負荷を与えないと、神経系が発達しない
というのも事実です。
トレーニングとは過負荷を与えて体を適応させていくことで、パフォーマンスが向上することです。
この適応反応は筋肉同様に神経にも作用します。
なので神経も疲労させないと適応しないということです。
例えばMAX重量が100kgだとして、今は100kgを毎回持つと神経系が疲労してしまうということはあると思います。
しかし、MAX重量が120kgになると毎回100kgを持っても神経系の疲労はほとんどなくなります。
また、高頻度(週5、週6)でMAX重量の90%~95%を持っていると、初めのうちは毎日できなかったりしますが段々と毎日持っても疲労が溜まらなくなっていきます。
このように神経系も重量や疲労に対して適応していくので、高重量のトレーニングを全く行わないと神経系の発達に遅れが出ます。
結果的にMAX重量が伸びなかったり、多セットや追い込みができずに筋肥大に悪影響を及ぼしかねません。
どのようにして神経系の疲労をコントロールしながらトップシングルを取り入れていくのかは次項でお話ししますが、一概に高重量を取り入れると神経系が疲労するからダメというのはやめた方が良いでしょう。
トップシングルのやり方
では具体的なトップシングルのやり方についてお話しします。
トップシングルのやり方はいくつかの方法がありますが、ここでは僕がメインで取り入れている方法をお伝えします。
練習全体の流れとしては
- ストレッチ、モビリティー
- アップ
- トップシングル
- セット
と仮定します。
まず初日のトップシングルは
MAX重量×90%からスタートします。
MAX重量が100kgだったとしたら
90kg×1回×1セット
です。
これが成功したら次回の練習では重量を+2.5kgして
92.5kg×1回×1セット
を行います。
これが成功したら次回の練習では重量を+2.5kgして
95kg×1回×1セット
です。
これを繰り返していくと、どこかでMAX重量がトップシングルになることもあります。
例えば、トップシングルを100kgで行い感覚的に軽かったら
次回の練習ではMAX挑戦として102.5kgを行っても良いです。
注意が必要なのは「100kgで軽かったら」というのが条件です。
100kgで失敗した場合、100kgが重かった場合、ギリギリだった場合は、その重量から10kg引いて再度
90kg×1回×1セット
からスタートします。
基本的にはこれの繰り返しです。
流れをおさらいします。
MAX重量が100kgの場合
- スタート 90kg(成功)
- 2回目:92.5kg(成功)
- 3回目:95kg(成功)
- 4回目:97.5kg(成功)
- 5回目:100kg(失敗/重い/ギリギリ)次回は重量-10kg
- 6回目:90kg(成功)
- 7回目:92.5kg(成功)
- 8回目:95kg(成功)
- 9回目:97.5kg(成功)
- 10回目:100kg(成功!)
- 11回目:102.5kg(MAX挑戦 失敗)次回は重量-10kg
- 12回目:92.5kg(成功)
- 繰り返し・・・
このような流れで軽い重量→重い重量へと移行していくことで、高重量の後に比較的低重量を行うことができ、神経系の疲労を考慮しつつトップシングルを行うことができます。
ここで多くの人が浮かぶ一つの疑問として
軽い重量をやる意味はあるのですか?
毎回ギリギリで追い込んだ方が良いのではないですか?
というものがあります。
軽い重量を行う理由は先に述べた神経系の疲労管理に加え
崩れたフォームを整える
という理由があります。
特にMAX付近の重量を行うと、フォームを崩さないように意識したとしても無意識にフォームが崩れていきます。
これは上級者でも同じです。
崩れたフォームのまま高重量を持ち続けると、さらにフォームが崩れ、反復することで崩れたフォームが定着します。
崩れたフォームで高重量を繰り返していると結果的にケガをすることは想像できると思います。
なので、MAXに近い高重量やMAX挑戦を行った後は重量を落として、自分にとってある程度余裕のある重量でフォームを整えます。
トップシングルを高重量帯でのフォーム練習として行う、ということです。
一見無駄に思えるかもしれませんが、ベンチプレスはフォームの良し悪しで挙上重量が10kg、20kgと変わる種目なので、フォームを調整し崩れないようにするということは非常に重要です。
まとめ
トップシングルとは、その日に扱える高重量(90〜100%1RM)を1回だけ挙げるトレーニングです。
主な目的は、
- 神経系への刺激
- 高重量でのフォーム練習
- セット前の神経活性化
- MAX挑戦の準備
などで、筋肥大より筋力アップに直結する手法です。
トップシングルのやり方(基本)
- 初回は MAXの90%×1回 からスタート
- 成功すれば次回 +2.5kg
- 失敗・ギリギリなら −10kg に戻してやり直し
- 高重量後は軽めの重量でフォーム調整を行う
ポイントと注意点
- 神経も慣れていくので、焦らず継続が大事
- 毎回実施OKだが、疲労や関節の違和感がある日は無理しない
- フォームが崩れない範囲で行うことが最優先
- 優先順位は「セット > トップシングル」
以上です。
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これからもベンチプレス頑張りましょう。
バイバイ。
参考文献:
(1) 池田 宏,「海馬体シナプスの長期増強機序:新しい展開」, Biophysics, 30巻5号, pp.245–254, 1990.
(2) 熊本栄一, 久場健司, 「海馬体シナプスの長期増強機序:新しい展開」, 生物物理, 30巻5号, pp.245–254, 1990年. https://doi.org/10.2142/biophys.30.245
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